仏壇に供えるお水の正しい捨て方と作法【宗派ごとの違いも解説】
仏壇の中段にご飯とお水をお供えした例。中央に仏飯器(ご飯)、その左側にお水を供えている。仏壇にお水を供えることには深い意味とマナーがあります。
仏壇にお供えしたお水を「いつ・どのように取り替え、どこに捨てれば良いのか」悩んでいませんか?この記事では、仏壇に供えるお水の意味から正しい捨て方のマナー、さらに宗派ごとの違いまで、やさしく丁寧に解説します。仏壇のお水の扱いに不安を感じている方も、この記事を読めば安心して日々の供養に取り組めるでしょう。ポイントを押さえつつ、現代の生活に合った柔軟な考え方や初心者向けQ&Aも交えています。大切なのは形式よりも心と言われますが、正しい作法を知っておくことで自信を持って供養できるはずです。ぜひ参考にしてください。
仏壇にお水をお供えする意味とは?
仏壇にお水を供えるのは、清らかな心でご先祖様や仏様への敬意を示す大切な行為です。仏教では仏壇へのお供え物として「五供(ごく)」と呼ばれる基本セットがあり、その中の一つが水(浄水)またはお茶です。では、なぜ水をお供えするのでしょうか。
- ご先祖様の喉の渇きを潤すため: 昔から「亡くなった方は喉が渇いている」と考えられており、お水は故人の喉を潤すための供養だとされています。日々食べ物や飲み物に困らず生活できていることへの感謝を形に表す「飲食供養(おんじきくよう)」の一環でもあります。亡き家族を家族同様に思い、お茶やお水を出してもてなす気持ちとも言えるでしょう。ただし、後述するように浄土真宗では「故人は極楽浄土で渇かない」としてこの考え方を採りません。宗派によって解釈が異なる点は注意が必要です。
- 清浄(しょうじょう)の象徴として: 水は透き通って澄んだ様子から「清浄」の象徴とされます。仏壇にお水を供えることで「穢れなき浄土の世界」を表し、お参りする人の心身を清めるとも言われます。お寺で手を清めるのに水を使うのと同様に、水が場と心を清めてくれるという意味合いがあります。新鮮なお水を供えることで、自分自身も清らかな気持ちで仏様に向き合えるでしょう。
- ご先祖様への感謝と家族の絆: 毎日お水やお茶を供える行為そのものが、ご先祖様への感謝と日々の食事への感謝を示す習慣です。忙しい生活の中でも、お水を供えるひとときが心を整え、ご先祖様とのつながりを感じる時間になります。「仏様も家族の一員」と考えてお給仕することで、自然と感謝の心が養われていきます。
- お茶を供える意味との違い: お水と並んでお茶をお供えする習慣もありますが、お茶には「故人が生前好きだった飲み物を供える」という意味があります。一方、水は上記のように清浄の象徴です。どちらを供えても問題ありませんし、水とお茶両方供えることも可能です。一般的にはご飯(仏飯器)の両側に置き、向かって右側に水、左側にお茶という並べ方がよく見られますが、厳密な決まりではありません。宗派や地域による違いがある場合もあるので、心配な場合は菩提寺(先祖代々のお寺)に確認してみると安心です。
お水を取り替える頻度とタイミング
仏壇の浄水は、できれば毎日新しいものに取り替えるのが理想とされています。特に朝一番に仏壇に向かう際、その日の初めにお水を供えるとよいでしょう。では具体的な頻度や時間帯について詳しく見てみます。
- 毎日供えるのが基本: 多くの宗派ではお水やお茶は毎朝新しくお供えすることを勧めています。朝、新鮮なお水をお仏壇にあげることで、清らかな一日のスタートを切る意味合いもあります。仏様へのお給仕としては「お水は毎朝一番に」が基本と言われることもあります。朝供えたら遅くともその日の夕方~夜には下げて処理し、翌朝にまた新しい水を供えるのが一般的なサイクルです。
- 朝晩2回交換する例も: 地域や家によっては、お水を朝晩2回取り替えるところもあります。例えば朝に一度新しい水を供え、昼前に下げ、夕方にもう一度新しいお水をお供えする、といった習慣です。ただ、これはあくまで丁寧な供養の一例であり、必ずしも朝晩2回が絶対の作法ではありません。お茶に関しては基本的に朝1回供える程度で十分でしょう(お茶は湯気が出なくなったら下げるため一日一回で足ります)。重要なのは仏様への気持ちを日々欠かさないことです。
- 取り替える時間帯の目安: お水を供えるタイミングや下げる時間に厳密な決まりはありませんが、よく言われるのは**「朝供えて昼前には下げる」という目安です。仏様はお供えしたご飯やお茶の湯気や香りを召し上がる(香食〈こうじき〉)**とされるため、湯気や香りがなくなった頃合いに下げて構わないとされています。具体的には、ご飯やお茶が冷め切った頃、あるいは正午前後には下げる人が多いようです。長時間お供えしたまま放置するのは避け、水が古くなったり埃が入ったりする前に下げるのがマナーです。
- 忙しい場合は無理のない範囲で: 理想は毎日でも、現代の忙しい生活では毎日供えるのが難しい場合もあります。そのようなときは「必ずしも完璧に毎日でなくても大丈夫」です。大切なのは心を込めて続けることであり、できる範囲で無理なく継続することが何よりです。例えば週に数回でも問題ありませんし、忙しい週はお休みしてしまっても、また思い出したときに新しいお水をあげれば大丈夫です。仏様は決して「サボった罰」を与えるような存在ではありません。忘れてしまったときは気づいたときに手を合わせて「遅くなってすみません」とお詫びし、次から気をつければよいのです。気負いすぎず、感謝の気持ちを持ち続けることが一番の供養になります。
- 夜間や留守中はどうする?: 夜も仏壇にお参りするご家庭では、夕食時にお茶やお水を少量お供えし、就寝前に下げる場合もあります。ただし、長時間留守にするとき(旅行や帰省など)はお水を下げておくほうが良いでしょう。特に夏場などは放置すると水が傷みますので、出かける前に仏壇のお水は片付けて、湯呑みや茶湯器(ちゃとうき)は空にしておいて構いません。戻ってきてから改めて新しいお水をお供えしましょう。留守中にお水や生花がないのは心苦しい…という方もいらっしゃいますが、その場合は造花を活用するなど環境に合わせて工夫して構いません。
お供えしたお水を下げるときの基本作法
お仏壇に供えたお水は、供えっぱなしにせず適切なタイミングで下げて処理することが大切です。ここでは、お水を下げる際のマナーや具体的な手順を説明します。
- 手を合わせ感謝してから下げる: お水を下げる際には、まず仏壇に向かって軽く一礼し、手を合わせて心の中で「お供えを下げさせていただきます」と断ってからにしましょう。いきなり無言で下げるよりも、一言感謝してお供えをお下げする方が丁寧です。「お陰様で○○できました、ありがとうございます」と日々の感謝を伝える時間にしても良いですね。
- 静かに持ち出し、適切な場所へ: 茶湯器や湯呑みごとお水を持ち、お仏壇から下げます。仏前から遠ざける際も乱雑にならないよう静かに扱いましょう。下げた後の処理場所については後述しますが、基本は台所などで処理します。持ち運ぶ途中でこぼさないよう、受け皿を使ったり慎重に運んでください。
- 「お下がり」としての考え方: 仏壇から下げたお供え物は**「仏様からのお下がり」と呼ばれます。本来は家族でありがたくいただくのが望ましいとも言われます。ご飯や果物などは家族で分けて食べたり、食べきれないものは土に埋めて自然に返す(※現代では衛生上難しければ廃棄でも問題ありません)方法もあります。お水やお茶は直接「飲む」人は少ないですが、気にならなければ飲んでも構いません。ただし衛生的に気になる場合は無理に飲まなくても大丈夫**です。後述するように、他の用途に再利用したり、適切に処分すればOKです。
- 仏具(茶湯器・湯呑)の後片付け: お水を捨て終わったら、仏具を清潔に保つことも忘れないでください。茶湯器や湯呑みなど、仏壇で使う器は毎回使用後に綺麗に洗って乾燥させます。特に仏様にお供えする器は日常のコップとは分け、仏壇専用のものを使うのが一般的です。毎日使うものですから、傷んできたら買い替えることも検討しましょう。清潔な器に清潔なお水を供えることも、供養の大事な一部です。
- 次のお供えの準備: お水を下げた後、その茶湯器や湯呑みはきちんと拭いて乾かし、次に供えるときまで清潔に保管します。仏壇に供える際は直接棚に置かず、**茶台(ちゃだい)や仏器膳(ぶっきぜん)**という小さな台に載せて供えると正式です。これも仏具店で手に入りますので、用意しておくと安心です。次に新しいお水を供える際は、また改めて新鮮なお水を注ぎ、仏壇にお供えします。「毎回必ず交換する」「器は専用のものを使う」「使用後は清潔に」というポイントを守れば、気持ちよくお参りできます。
お供えしたお水の正しい捨て方・処分方法
では、仏壇から下げたお水は具体的にどのように処分するのが良いのでしょうか。「流しに捨ててもバチは当たらない?」「庭に撒いてもいいの?」など悩むところですよね。基本的には以下のような方法が一般的です。
- 植物に水やりとして再利用: 供えたお水はまだ清らかですから、庭や鉢植えの植物に与えるのがおすすめです。植物も潤い、仏様への感謝の気持ちを自然に返す形になるので一石二鳥です。実際「もったいないから花や庭木にやっている」というお宅も多いです。庭がない場合でも、観葉植物やベランダのプランターにそっとかけてあげればOKです。植物がない場合は、排水口でなくベランダの端や土のある所に撒くという方法もあります(ただし他人の土地や公共の場所に勝手に撒くのは避けましょう)。
- 炊事や洗い物に使う: 少量であれば、そのお水を米とぎや食器洗いの最初のすすぎに使ってから流すという工夫もできます。「仏様のおさがりのお水で炊いたご飯はありがたい」と昔は言われたこともあります。現代では衛生上そこまでしないかもしれませんが、ご飯を炊くときにその水を一部使うといった再利用も可能です。ただし、お茶や少しでも汚れが混じった水は炊事には向かないので、無理せず植物にあげる程度が良いでしょう。
- 水道の流しに捨てる: 結論から言えば、台所の流しに捨ててしまって問題ありません。多くの方は最終的にシンクにお水を流しています。仏壇から下げたお水自体に特別な力が宿っているかどうかは考え方次第ですが、「神聖なお水だから汚い所に流してはいけない」という決まりはありません。実際、仏壇店の解説でも「流しに捨てても差し支えありません」と明記されています。ですから台所でそのまま処分して大丈夫です。ただし、できれば捨てるときに**「ありがとうございました」と心の中で唱えながら流すと良いでしょう。感謝の気持ちを込めて処理することで、雑に捨てるよりも気持ちが落ち着くはずです。
- 処分時のタブー・注意点: お水の処分に明確なタブーはありませんが、一般的なマナーとして次の点に気をつけましょう。まず、汚い場所(例:トイレ)に流すのは避けるのが無難です。さすがに仏様に供えた物をトイレに捨てるのは気が引けますし、心理的にも抵抗がありますよね。台所のシンク程度であれば日常的に使う場所なので問題ありませんが、トイレは礼を失する印象があります。基本的に台所の流しで処分すれば十分でしょう。また、庭などに撒く場合も人が踏む場所に撒かないようにしましょう。玄関先や通路にジャーっと捨てるのは、ご先祖様のお下がりを踏みつけるようで気持ちの良いものではありません。土に染み込ませるか植物の根元に静かに注ぐようにすると安心です。
- 長期間放置しないこと: 処分とは少し違いますが、お供えしたお水を下げ忘れて長期間そのままにしておくのは避けましょう。水垢が付いたり虫が湧いたりして不衛生ですし、何より仏様への供養が止まってしまっている状態です。万一数日間下げ忘れた場合は、気づいたときにすぐ新しい水に交換してください。「しまった…」と思ったら、「遅くなってすみませんでした」と謝って新しいお水をあげれば大丈夫です。仏様もきっと許してくださるでしょう。
仏壇のお水に関するタブーはあるの?
お水そのものの捨て方に大きなタブーはありませんが、仏壇の水にまつわる一般的な禁忌についても触れておきます。これは捨て方と言うより供え方に関する注意ですが、併せて押さえておきましょう。
- 冷たい水や氷水は避ける: 仏壇に供えるお水やお茶は、基本的に常温で供えるのが望ましいです。真夏など地域によっては冷たいお茶をお供えする風習もありますが、冷たい飲み物は器に結露が付き、仏壇を傷める可能性があります。また、冷えすぎたものより常温の方が仏様にとってもやさしいと考えられます。そのため、冷蔵庫から出したばかりのお水は少し室温に戻してから供えるのがマナーです。氷を浮かべたり、極端に熱い湯を入れたりする必要もありません。季節によってはぬるめのお茶を供えることもありますが、基本は人肌程度か常温の飲み物を選びましょう。
- 仏壇にお水を絶やさない: 「仏壇のお水は常に新鮮なものを」「お水を絶やさないように」とよく言われます。これは、仏様への敬意としてお水を切らさないようにとの教えです。ただし、絶対に途切れてはいけないというより、気持ちとして常にお水をお供えする心がけを持ちましょうという意味合いに近いです。ですから留守中など物理的に無理なときまで無理に置いておく必要はありません。大事なのは「帰宅したらまず仏壇に水を供える」「朝起きたらまずお水を取り替える」といった習慣をつけることです。これを怠ったからといって罰が当たることはありませんが、供養の心が薄れないよう意識しましょう。
- お供えをそのまま腐らせない: 先述のように、水に限らずお供え物を仏壇に置きっぱなしにして腐らせたり枯らしたりするのはNGです。例えばご飯がカピカピに乾いていたり、花が枯れて水が臭くなっていたりすると仏様に失礼にあたります。古くなったお供え物は速やかに下げて処分し、新鮮なものと交換しましょう。特に水は痛みやすいので、夏場は朝入れた水でも夕方にはぬるんで雑菌が繁殖しやすくなります。気温や湿度に応じて交換頻度を上げることも検討してください。常に清潔でみずみずしい状態を保つことが、仏壇をお祀りする上での基本です。
以上の点を守れば、仏壇のお水の捨て方・扱い方で大きく踏み外すことはないでしょう。次に、宗派による違いについて詳しく説明します。
宗派ごとに異なるお水の供え方・考え方
仏壇にお水を供える風習は多くの宗派で共通していますが、一部の宗派では考え方や作法が異なる場合があります。特に浄土真宗は他の宗派と大きく異なる点があるため注意が必要です。主な宗派の違いを押さえておきましょう。
- 浄土真宗(じょうどしんしゅう): 浄土真宗では基本的にお茶やお水を仏壇にお供えしない教えになっています。これは「亡くなった方はすぐに極楽浄土へ往生し、八功徳水(はっくどくすい)という清らかな水が満ちた世界にいるので渇きを感じない」という教義によるものです。その代わり、浄土真宗の仏壇には**「華瓶(けびょう)」と呼ばれる小さな壺型の仏具を用意し、少量の水を入れて樒(しきみ)という常緑樹の葉を挿して供えます。これは極楽浄土の清らかな水(香り高い水)を象徴した供え方です。浄土真宗西本願寺派(お西)では色付きの華瓶、東本願寺派(お東)では金色の華瓶を使うなど細かな違いもありますが、いずれにせよ浄土真宗では「水やお茶を直接供える」のではなく「香水として華瓶に水と樒を供える」**と覚えておきましょう。浄土真宗の方はお茶やお水を供える必要は基本的にありません(※地域によっては浄土真宗でもお茶を供える習慣が残っている家もありますが、正式には不要です)。
- 浄土宗(じょうどしゅう)やその他の仏教各宗: 浄土宗、天台宗、真言宗、禅宗(曹洞宗・臨済宗)などほとんどの宗派では、お水(浄水)やお茶のお供えに厳しい決まりは特にありません。五供すべてを供えるのが基本で、新鮮なお水やお茶を日々お供えするのが一般的です。例えば曹洞宗では「お仏壇には五供を欠かさず、故人が喉が渇かないようにお水かお茶を供える」とされています。真言宗でも特に区別なく水またはお茶を供えて構いません。使用する仏具は茶湯器(ちゃとうき)といって汎用の湯呑み型の器が多いですが、宗派ごとに細かな呼び名や様式の違いはあります。ただし作法としては他宗と大差なく、毎日お水を替えて感謝の気持ちで供えることが大切です。
- 日蓮宗(にちれんしゅう)・日蓮正宗: 日蓮宗系では基本的に五供を供え、ご本尊(日蓮聖人や曼荼羅)の前にお水やお茶もお供えします。故人の好物を供えることも許容されているなど比較的柔軟です。一方で日蓮正宗では少し特徴があり、お供えする飲み物は水に限られ、お茶や湯は供えないとされています。そのため、日蓮正宗の仏壇では茶湯器のことを「水入れ」と呼ぶ場合もあります。この違いは宗派の教義によるものなので、日蓮正宗を信仰されている方は水のみ供えるようにしましょう。ただ、一般的な日蓮宗(正宗以外)ではお茶を供えても問題ありません。宗派名が同じでも宗派内部の分派によって作法が異なる場合がある点にご注意ください。
- その他の宗派や地域差: 上記以外にも、各宗派で細かな風習の違いが存在します。例えば浄土真宗以外でも、「うちはお茶は供えず水だけ」という家もあれば、その逆もあります。地方の慣習で決まっている場合もあります。基本的にはご自身の家の宗派や菩提寺の指導に従うのが安心です。お寺で教わったやり方があればそれを優先し、不明点があれば遠慮なくお寺の住職や仏壇店の店員に尋ねましょう。「宗派や地域によって異なる可能性があるため、専門家に確認を」との注意書きを各所で見かけるのはそのためです。迷ったときは自己判断せず、詳しい方に相談するのが確実です。
なお、浄土真宗ではお供え自体の考え方が他と異なり、お供え物は仏様への「供養」というより仏前を荘厳する飾りという位置づけです。そのため、生花ではなく造花を用いたり、ご飯を供えないなどの違いがあります。このように各宗派の教えによって作法は違いますが、**共通するのは「ご先祖や仏様への敬意を込めること」**です。どの流派でも、敬意と感謝の気持ちさえ忘れなければ大きな間違いは起こりません。
現代の生活環境に合わせた柔軟な供養の工夫
昔に比べ、現代の生活スタイルは多様化しています。それに伴い、仏壇へのお水の供え方や管理も柔軟に工夫することが大切です。無理なく続けるための実践例やアイデアをいくつかご紹介します。
- 水道水やペットボトル水でOK: お供えするお水は特別なものでなくて構いません。本来的には清らかな自然の水が理想ですが、現代では水道水で十分とされています。市販のミネラルウォーターでも問題ありません。むしろペットボトルの水は仏教で言う八功徳水(甘く冷たく清らかな理想の水)に近いとも言われ、お供えに適しているとの解釈もあります。大切なのは**「いつも新鮮な水を供える」**ことであって、水質そのものに神秘的なこだわりは不要です。井戸水でなければいけない、といった決まりもありません。ご自宅で手に入りやすい清潔な水を使いましょう。
- タイマーやメモで習慣づけ: 忙しい方やつい忘れがちな方は、スマホのアラームやカレンダーに「仏壇の水替え」とセットしておくのも一つの方法です。「朝7時にお仏壇」というようにリマインダーを使えば、うっかりが減るかもしれません。また、仏壇の見える場所に**「感謝」「お水OK?」などメモを貼っておく**のも効果的です。毎日決まった時間(朝の歯磨き後など)にお参りするルーティンを作れば、自然と身についていくでしょう。
- ミニ仏壇・マンション事情への対応: 最近はコンパクトな仏壇をマンションに置く家庭も増えています。その場合、水がこぼれると心配なこともありますよね。茶湯器の下に小さな受け皿を敷くと、多少こぼれても安心です。仏壇専用の耐水マットも市販されています。また、ペットや小さなお子さんがいて倒されないか心配なときは、仏壇の扉を閉めておくか、高い位置に仏壇を配置するなどの工夫をしましょう。最近では倒れてもこぼれにくい蓋付きの仏具なども登場しています。現代の住環境に合わせて道具を選ぶのも一つの適応です。
- 毎日できない場合の代替案: 前述のように、ご飯を毎日炊けないときは冷凍ご飯やインスタントのお粥で代用するアイデアもあります。お水に関しては幸い、汲むだけなので負担は小さいですが、どうしても難しい事情があるときはお線香やお花だけでもお供えして手を合わせるようにしましょう。例えば入院中や長期出張中など、自宅でお水を替えられない場合もあります。その際は無理をせず、心の中でご先祖様に語りかけたり、簡易的なお参りをするだけでも十分です。「形より心」を忘れず、できないことを悔やむよりできることを続ける姿勢が大切です。
- 清潔第一、衛生面の配慮: 現代では衛生観念も発達していますので、仏壇も常に清潔に保つよう心がけましょう。ときどき茶湯器や花立てにヌメリがないか確認し、水垢がついていたら中性洗剤で洗います(仏具を洗う際は他の食器と分けて洗う人もいます)。夏場は特にお水が傷みやすいので、エアコンを適度に使って室温管理するのも一案です。また、防虫剤の香りが水に移ることもあるので、仏壇内の防虫対策にも注意しましょう。現代の住宅事情に合わせ、仏壇を清潔・快適に維持することも供養のうちです。
このように、昔ながらの作法を踏まえつつも現代ならではの工夫を取り入れて、無理なく続けられる供養スタイルを見つけてください。要は、ご先祖様に対する真心さえあれば多少の省略や工夫は問題ないということです。では最後に、初心者の方が抱きがちな疑問をQ&A形式でまとめます。
仏壇のお水に関するよくあるQ&A
Q1: 仏壇のお水は毎日交換しないとダメですか?忘れたら罰が当たりますか?
A1: 理想的には毎日朝に新しいお水をお供えするのが望ましいですが、忘れてしまったからといって罰が当たるようなことはありません。仏様は私たちに罰を与える存在ではなく、大切なのは感謝の気持ちです。忙しい日は無理せず、気づいたときに「遅れてごめんなさい」とお詫びして新しい水を供えれば大丈夫です。毎日が難しければ二日に一回や週末だけでも構いません。継続することが大事なので、無理のないペースで続けてください。
Q2: 供えたお水は飲んでもいいのでしょうか?それとも捨てるべきですか?
A2: 仏壇に供えたお水(やお茶)は**「仏様のお下がり」として本来いただいても問題ありません】。抵抗がなければ飲んでも構いませんが、無理に飲む必要はありません。多くの方はそのまま流しに捨てていますが、それで問題ありません。植物に与えるなどの再利用もおすすめです。いずれにせよ、処分するときは感謝の心を忘れずに。敬意をもって処理すれば、飲んでも捨てても失礼にはあたりません。
Q3: 浄土真宗なのですが、本当にお水を供えなくてもいいのでしょうか?
A3: はい、浄土真宗では基本的に飲み水やお茶を仏壇に供えません。浄土真宗の教えでは故人は極楽浄土におられ渇きもしないため、水やお茶の供養は不要とされています。その代わり、仏壇には華瓶(けびょう)という器に水と樒の葉を挿して供える習慣があります。もしご実家が浄土真宗で「水を供えなくてよい」と聞いて戸惑っている場合は、その教えに従って大丈夫です。ただし地域によっては浄土真宗でもお茶をあげる習慣が残っている所もあるので、菩提寺があれば念のため確認すると安心でしょう。
Q4: 仏壇に供えるお水は水道水で良いのですか?何か特別な水が必要ですか?
A4: 水道水で全く問題ありません。昔は井戸水や湧き水を使うこともありましたが、現在は衛生的な水道水や市販の水で差し支えありません。むしろペットボトルのミネラルウォーターなどは八功徳水に通じる清らかさがあるとされ、お供えに適しているとも言われます。要は新鮮で清潔なお水であれば十分です。温度も常温が望ましいですが、特別な聖水を用意する必要はありません。
Q5: 下げたお水を台所に流すのはバチ当たりですか?
A5: いいえ、台所の流しに捨てても差し支えありません。多くの仏事の専門家もそのように説明しています。ただ、「そのまま捨てるのは気が引ける…」という場合は、植物にあげるなど自然に返す形にすると気持ちが楽になります。要は捨て方よりも捨てるときの心構えです。「ありがとうございました」と感謝しつつ流すようにすれば、きっと仏様も喜んでくださるでしょう。
以上、仏壇のお水の正しい捨て方・作法について、宗派ごとの違いにも触れながら解説しました。毎日のお水替えは一見地味な作業ですが、その一杯のお水に込めた真心こそが何よりの供養です。決まりごとに縛られすぎず、しかし敬意は忘れずに、マイペースに続けていきましょう。きっとご先祖様も温かく見守ってくださっていることと思います。困ったときはいつでも専門家に相談し、正しい情報に基づいて安心して供養を行ってくださいね。毎日の積み重ねが尊い供養となりますので、今日もどうぞ清らかなお水を手向けて、ご先祖様との心の対話を大切にしてください。