お位牌とは?意味・種類・選び方・供養までをやさしく解説

1. お位牌とは——役割と由来(故人の“依り代”という考え方)

お位牌(いはい)は、亡くなられた方の戒名(法名)や俗名、没年月日、行年などを記した木製の札・台座付きの礼拝具です。仏教の供養においては、故人の“依り代(よりしろ)”——ご遺族が手を合わせ、語りかけ、想いを結ぶための象徴——としての役割を担います。毎日の読経・焼香・お水やお花のお供えなど、日々の供養行為の中心に据えられる存在です。

なぜお位牌を用意するのか

  • 供養の拠り所:形として目に見える拠点があることで、手を合わせる習慣が続きやすく、心の整理(グリーフケア)にもつながります。
  • 故人の尊厳の表現:戒名(法名)や行年を記すことで、人生を敬い、記憶を伝承していく意義があります。
  • 仏壇・お墓との関係:仏壇での日々のご供養と、お墓参り(年忌法要など)をつなぐ“家内の中心”として機能します。

由来の概略

位牌の起源は中国の先祖祭祀に由来し、日本では中世以降に仏教儀礼へ取り入れられ、江戸期に一般家庭へ広く普及しました。ご葬儀から忌明け(四十九日)にかけては仮の「白木位牌」を用い、以後は長く安置する「本位牌」へ移行するのが一般的です(詳細は後章で解説)。

宗派との関係(まずは全体像)

多くの宗派で位牌を安置しますが、扱い方や表記の作法は宗派で異なります。たとえば浄土真宗では位牌よりも過去帳法名軸を尊重するなど、位置づけが異なる場合があります(各宗派の違いは後章で整理します)。

「位牌がないと供養できない?」への答え

結論はNoです。写真や過去帳に手を合わせる、墓前でお参りするなど、供養のかたちはさまざまです。ただし、位牌は日々の礼拝を“かたち”として支え、節目の法要(年忌など)でも基点になりやすい——この実用面の利点は大きいと言えます。

まず理解しておきたい要点

  • 位牌は故人の象徴であり、家族の祈りの中心。
  • 四十九日前後で白木位牌→本位牌へ切替える流れが一般的。
  • 宗派ごとに作法が異なるため、刻字や安置の仕方は後述のガイドに沿って検討する。

2. 位牌の種類:白木位牌/本位牌/繰出(回出)位牌/モダン位牌

位牌は「用途(いつまで・どこで)」「家族構成」「仏壇とのバランス」で選びます。代表的な種類を押さえておくと、迷いにくくなります。

2-1. 白木位牌(しらきいはい)——葬儀~四十九日までの“仮位牌”

  • 位置づけ:ご葬儀から忌明け(四十九日)までに用いる仮の位牌。
  • 手配:多くは葬儀社や寺院が用意し、戒名(法名)等を墨書。
  • その後:四十九日前後で本位牌へ“引き継ぎ”ます(札内容は本位牌に刻字)。

2-2. 本位牌(ほんいはい)——ご自宅で永く安置する正式な位牌

日々の礼拝の中心となる位牌。材・仕上げで大きく2系統に分かれます。

  • 塗位牌(ぬりいはい)
    黒塗や漆塗に金粉・金箔の装飾。典雅で礼装感が強い。
    代表的な型:春日・勝美・葵角切・上京型 など。
  • 唐木位牌(からきいはい)
    黒檀・紫檀など銘木の木地を活かした重厚な風合い。和室・現代仏壇どちらにも合わせやすい。
  • 札板型・薄型
    上置き仏壇や省スペース向けに、札板が薄くコンパクトなタイプも。

文字入れは「彫り(機械彫り/手彫り)」「書き(手書き・金箔書き)」など。レイアウトは宗派の書式やご希望に合わせます(細かな刻字内容は第5章で解説)。

2-3. 繰出(回出)位牌——先祖代々を一基にまとめる

  • 構造:外枠の中に札板を複数枚収納。年忌順や代ごとに差し替え可能。
  • メリット:仏壇がコンパクトでも先祖の位牌を一つに集約でき、管理もしやすい。
  • 注意:札のサイズ・枚数に上限あり。追加刻字や配列のルール(新仏は手前等)を家内で決めておくと混乱しません。

2-4. 夫婦位牌・連名位牌——1基にお二人(または複数名)

  • 使い方:左右や上下でお二人の戒名(法名)を配列。先に亡くなられた方を右側(向かって左)にする等の習わしが一般的。
  • 後刻対応:片側を空けておき、後から追加刻字することも可能(書体・色合わせは事前確認)。
  • 世帯事情:兄弟・親族連名など柔軟に対応できますが、文字数や札幅に制約があるため事前設計が安心。

2-5. モダン位牌(ガラス・クリスタル・メタル・ウォールナット等)

  • 特徴:直線的・シンプルで、リビング仏壇やインテリア仏壇に調和。
  • 見た目:透明感や木目の質感を活かし、生活空間に自然に置けるのが強み。
  • 注意:ガラス系は指紋・反射、金属系は重量設置面の傷に配慮。お手入れは柔らかい布で。

2-6. 関連アイテム(補足)

  • 過去帳:ご先祖の戒名・法名や没年月日を帳面に記載。とくに浄土真宗では位牌より過去帳・法名軸を重んじる傾向。
  • 法名軸:掛け軸形式で法名を記すもの。
  • 神道の「霊璽(れいじ)」:役割は近いが位牌とは別物(神式)。家の信仰形態に合わせて選びます。

どれを選ぶ?かんたん早見

  • 初めての準備/葬儀直後 → まずは白木位牌 → 四十九日までに本位牌を用意。
  • 一人用を丁寧に本位牌(塗/唐木)。仏壇の雰囲気に合わせる。
  • ご先祖をまとめたい・仏壇が小さい繰出位牌
  • リビングに自然に置きたいモダン位牌
  • ご夫婦を1基に夫婦位牌(連名)。将来の後刻も視野に。

サイズや刻字の細かい決め方、納期・費用感はこのあと詳説します(第5章・第8章・第9章)。

3. 形・素材の違い:塗位牌・唐木位牌・札板型などの基本

位牌は「見た目」だけでなく、素材・塗り・構造で使い勝手や耐久性が変わります。ここでは選ぶ前に知っておきたい“つくりの基本”を整理します。

3-1. 基本構造と各部名称

  • 札(棹・札板):戒名(法名)などを刻字・書字する板。
  • 台座(台輪・芝台):札を支える土台部分。二段・三段のものや、蓮華座など装飾型も。
  • 天冠・屋根:上部の意匠。型名ごとの“顔”になる部分。
    → 形状は安定感掃除のしやすさに影響します。凹凸や透かし彫りが多いほど荘厳ですが、埃はたまりやすくなります。

3-2. 塗位牌(漆・カシュー・ウレタン)

  • 特徴:黒塗り+金粉・金箔で気品があり、礼装感が高い。法要の場でも映える“王道”。
  • 塗りの種類
    • 本漆:奥行きある艶と“しっとり”した質感。傷が目立ちにくい反面、価格は高め。
    • カシュー/ウレタン:均一な艶で手入れが容易、価格も抑えやすい。
  • 代表的な型春日/勝美/葵角切/京型楼門など。装飾が増すほど重厚で、重量も増える傾向。
  • 相性伝統仏壇(唐木・金仏壇)と好相性。現代仏壇でも“礼装感”を足したい場合に。

3-3. 唐木位牌(黒檀・紫檀・花梨 等)

  • 特徴:銘木の木目・質感を活かすタイプ。経年で色艶が落ち着くのが魅力。
  • 材の違い
    • 黒檀:高密度で重厚、色味は濃く締まる。
    • 紫檀:赤褐色~紫がかった深み、艶の乗りが良い。
    • 花梨・ウォールナット等:軽やかでモダン空間にも溶け込みやすい。
  • 無垢 vs 突板
    • 無垢:一枚材で高級・重量感。反り対策の作りに注目。
    • 突板:芯材に銘木薄板を貼る。軽量でコスパ良。木口の仕上げ精度が品質差に直結。
  • 相性現代仏壇・リビング仏壇に自然に馴染む。

3-4. 札板型・薄型・省スペース

  • 特徴:札板をシンプルに見せる設計で、高さ・奥行きを抑えられる
  • メリット上置き仏壇や棚上スペースに置きやすい/掃除しやすい。
  • 留意点刻字面積が小さくなるため、連名や文字数が多い場合はレイアウトを事前に確認。

3-5. ガラス・クリスタル・メタル等(モダン材)

  • 見た目:透明感・直線美でリビングに溶け込みやすい。
  • 実用:ガラスは指紋・反射、メタルは重量・設置面の傷に配慮。柔らかい布での拭き上げが基本。
  • 刻字レーザー彫刻が主流。光の当たり方で可読性が変わるため、置き場所の照度もチェック。

3-6. 寸法(号・寸)の見方と仏壇バランス

  • 表記の基準は主に札丈(札板の高さ)。例:3.5寸/4.0寸/4.5寸/5.0寸…
  • “全高”は型で変わる:同じ4.5寸でも、台座や天冠のデザインで全体の高さが数センチ変わることがあります。
  • 選び方のコツ
    1. 仏壇の有効高さ扉の開閉余裕を採寸。
    2. 線香立・花立との視線バランス(位牌が主役に見えるか)。
    3. 夫婦位牌・繰出位牌は幅と奥行きも要チェック。

3-7. 耐久性とお手入れ

  • 塗位牌:乾拭きが基本。化学薬品はNG。金箔部は押さえるように優しく。
  • 唐木位牌:乾拭き+年に数回、乾いた柔らか布で艶出し。直射日光・過乾燥に注意。
  • ガラス・メタル:指紋はマイクロファイバーで。落下防止に耐震マットが有効。
  • 共通:直射日光・エアコン直風・加湿器のミスト直撃は避ける。転倒・落下対策を。

3-8. 迷ったらここを見る(早見表)

  • 礼装重視/伝統仏壇と調和塗位牌(本漆 or 艶控えめ塗装)
  • 木の温もり・経年の味唐木位牌(黒檀・紫檀)
  • 棚上・省スペース札板型・薄型
  • リビング統一感・ガラスの透明感モダン材(クリスタル等)
  • 先祖をまとめる繰出位牌(※第2章参照)

価格や納期は第9章で詳しく整理します。まずは仏壇の実寸採り置き場所の光量を確認してから、材・型を絞るのが失敗しないコツです。

4. 宗派ごとの扱いの違い(まずは全体像)

宗派で位牌の位置づけ・表記・儀礼が異なります。迷ったら、まず「そのお家が日ごろお参りしている寺院(菩提寺)の作法」を基準にしましょう。

4-1. 浄土真宗(本願寺派・大谷派 など)

  • 基本方針:原則として位牌は用いず過去帳法名軸を尊重します。
  • 葬儀~忌明け:白木位牌は葬儀時に用いることがありますが、四十九日後は本位牌を作らず、過去帳へ記載するのが一般的。
  • 表記:戒名ではなく法名(例:釋○○/釋尼○○)。「◯◯位」の“位”を付けない運用が多い。
  • 儀礼用語:「開眼(魂入れ)」ではなく入仏・遷座という表現を用いることが多い。
  • 備考:地域慣習で位牌を併用する例もあるため、迷ったら寺院に確認。

4-2. 浄土宗

  • 基本方針位牌を用いる宗派。白木→本位牌へ移行。
  • 表記:戒名+(必要に応じて)居士/大姉/信士/信女等の号、没年月日、享年(または行年)。
  • 補足:**六字名号(南無阿弥陀仏)**や梵字を意匠に入れる場合もあるが、寺院方針に合わせる。

4-3. 禅宗(曹洞宗・臨済宗・黄檗宗)

  • 基本方針位牌を用いる。白木→本位牌。
  • 表記:戒名(道号・院号等を付すことあり)/没年月日/享年(行年)。
  • 並べ方:複数ある場合は向かって右を上座として古いご先祖から順に並べる運用が一般的。

4-4. 天台宗

  • 基本方針位牌を用いる
  • 表記:戒名や院号などを付す。意匠として梵字を好む地域例も。実務は寺院に確認。

4-5. 真言宗

  • 基本方針位牌を用いる
  • 表記・意匠:戒名(院号・道号など)+没年月日等。梵字や蓮台意匠を好む傾向もある(地域差あり)。

4-6. 日蓮宗

  • 基本方針位牌を用いる
  • 表記:戒名(在家は通常“日号”は付さない)。**題目(南無妙法蓮華経)**や「妙法」等の文字を位牌意匠に入れる例も。
  • 補足:寺院により細部の書式が異なるためレイアウトは要確認。

4-7. 神道・キリスト教(参考)

  • 神道:位牌ではなく霊璽(れいじ)
  • キリスト教:位牌の習わしは基本的にありません(記名板・写真・記念碑等で偲ぶ)。

4-8. 刻字・年齢表記の実務ポイント

  • 戒名/法名:宗派で名称が異なる(浄土真宗は法名、他は戒名が一般的)。
  • “位”の有無:浄土真宗では**「位」を付けない**傾向。他宗派は「○○居士 之位」等を用いることあり。
  • 享年と行年
    • 享年数え年での年齢表記
    • 行年満年齢での年齢表記
      → どちらを用いるかは寺院の方針に合わせるのが安全。家内で統一しておくと混乱しない。
  • 和暦/西暦:どちらも可。家内と寺院で統一。

4-9. 安置・並べ方の基本

  • 安置場所:仏壇内で本尊を妨げない位置に。見台・段差で高さを調整。
  • 複数基のとき向かって右が上座とされ、古いご先祖から右→左へ配列が一般的。新仏は一時的に手前に出す運用もあるため、年忌ごとに整理。
  • 夫婦位牌(連名):左右どちらを先にするかは地域差があるため、寺院・地域慣習に従う。

迷ったらここを確認

  1. 菩提寺の作法(位牌の要否・表記の型・年齢表記のルール)
  2. 家内の統一(表記・並べ方・和暦/西暦を決める)
  3. 将来の追加刻字(夫婦/繰出の運用を想定してレイアウトを設計)

5. 刻字の基本:戒名(法名)・俗名・没年月日・行年の入れ方

位牌の刻字は宗派の作法+家内の統一が最優先。迷ったら菩提寺に確認し、版下(レイアウト)の校正を必ず行いましょう。

5-1. 基本構成(よくある並び)

  • 中央(主文字):戒名(※浄土真宗は法名)
  • 下部:〈之位〉等(※浄土真宗は付けないのが通例)
  • 右側(もしくは裏):没年月日(命日)
  • 左側(もしくは裏):年齢(享年=数え/行年=満年齢)
  • 裏面併記:俗名・本籍地・続柄などを入れる例も

表に情報を詰め込みすぎると読みづらくなります。俗名・没年月日・年齢は裏面に回すと上品にまとまります。

5-2. 宗派別の表記ルール(要点)

  • 浄土真宗法名(例:釋〇〇/釋尼〇〇)を刻み、「位」や「居士・大姉」等は付けないのが一般的。没日・俗名は裏面へ。
  • 上記以外(浄土宗・禅宗・天台・真言・日蓮など)戒名+(院号・道号・号)を中央、下に「之位」。没日・年齢は左右または裏へ。題字や梵字、題目は寺院方針に従う。

5-3. 俗名(生前名)の扱い

  • 裏書き推奨:誰の位牌か一目で分かるよう、裏面に**俗名(ふりがな可)**を刻すと実務的。
  • 表併記は可:表に小さく「俗名〇〇」併記もあるが、主文字の格を下げない配置に。

5-4. 没年月日の書き方

  • 和暦/西暦はどちらでもOK。家内・寺院で統一
  • 漢数字(例:令和七年十月二十五日)か算用数字(2025年10月25日)も統一。
  • 命日基準で記すのが一般的。

5-5. 年齢表記(享年/行年)

  • 享年=数え年行年=満年齢。どちらを使うかは寺院の方針に合わせる
  • 家の位牌で同じ基準に統一すると、後々の混乱がない。

5-6. 夫婦位牌・連名のレイアウト

  • 左右配列:先に亡くなられた方を**向かって右(上座)**に刻す運用が多い。
  • 追加刻字:将来の後刻を想定し、文字サイズ・空きスペースを確保。書体・金色も合わせる。

5-7. 繰出(回出)位牌の札書き

  • :各札の中央に戒名(法名)、下に〈之位〉等(※宗派に準拠)。
  • :没年月日・俗名・年齢。
  • 配列ルール:家内で「新しい順/古い順」を決め、一貫性を保つ。

5-8. 書体・加工と仕上げ

  • 彫り(機械彫り/手彫り):陰刻・金粉入れで可読性と耐久性。
  • 書き(手書き・金箔書き):艶やかで格調高いが、水分・摩擦に注意。
  • :金色(本金粉/代用金粉)の色味合わせを既存位牌と統一。
  • 校正:難字・旧字(髙/﨑 など)、戒名の文字化けに要注意。版下画像の最終確認は必須。

5-9. よくあるつまずき

  • 情報過多で窮屈:表は主文字中心、他情報は裏に。
  • 宗派不一致:「位」を付ける/付けない等は宗派・寺院ルールを優先
  • 年齢の混在:享年と行年が混ざると将来混乱。家の方針を先に決める
  • 和暦・西暦の混在:一基目で決めると後が楽。

5-10. 入力チェックリスト(そのまま店・寺院に渡せます)

  • 宗派/菩提寺名:
  • 位牌の種類・サイズ:
  • 戒名(または法名):
  • 院号・道号・号(あれば):
  • 俗名(ふりがな任意):
  • 没年月日(和暦or西暦/漢数字or算用数字):
  • 年齢(享年or行年):
  • 表記方針(「之位」の有無/裏面記載内容):
  • 夫婦・連名の有無(将来の後刻想定):
  • 書体・仕上げ(彫り/書き、金色の種類):
  • 既存位牌との色味・書体合わせの要否:

まずは宗派ルールと家内統一を決め、版下を校正してから刻字へ。これで“やり直し”を防げます。

6. 購入から開眼(魂入れ)まで:白木→本位牌への切替と時期

四十九日(地域により三十五日)前後の忌明け法要までに本位牌を用意し、法要の場で開眼(魂入れ)をして仏壇へ安置する——これが一般的な流れです(※浄土真宗は位牌ではなく過去帳・法名軸を中心に、表現も「入仏・遷座」などを用います)。

6-1. 逆算の基本(納期から考える)

  • 刻字~仕上げ:通常 5~10日 程度(内容校正のやり取りを含むと 1~2週間 を見込む)
  • 繁忙期(お盆・彼岸・年末など):+数日~1週間 の余裕を
    四十九日の2~3週間前 には版下(レイアウト)を確定できるよう、3~4週間前 から相談開始が安心です。

6-2. 手配の流れ(標準)

  1. 相談・採寸:仏壇の有効高さ・幅・奥行きを測る/既存位牌のサイズ確認
  2. 種類・サイズ決定:塗 or 唐木/単品 or 夫婦/繰出 等
  3. 刻字内容の準備:宗派・戒名(法名)・没日・年齢(享年or行年)・俗名 等
  4. 版下作成→校正:難字・旧字・和暦/西暦の整合を最終確認
  5. 刻字・仕上げ:彫り/書き、金色の種類合わせ
  6. 納品・検品:文字・仕上がり・サイズをチェック
  7. 開眼(魂入れ):法要に合わせて寺院に読経・開眼供養をお願いし、仏壇へ安置

6-3. 開眼(魂入れ)について

  • 目的:位牌を礼拝の対象として安置するにあたり、読経で清め・意義付けを行う儀礼。
  • 場所:ご自宅の仏壇前が一般的(寺院での開眼→持ち帰りの運用もあり)。
  • 準備物:位牌・仏具の清掃、供花・お線香・お供物(季節の果物など)、焼香台のスペース確保。
  • 服装:平服で可だが、落ち着いた色味を推奨(喪服指定は寺院方針による)。
  • 浄土真宗:位牌での開眼は行わず、過去帳・法名軸に対する入仏・遷座等の儀礼が中心。

6-4. お布施まわり(表書きの慣例)

  • 御布施:読経への謝礼
  • 御車代:寺院のご移動がある場合
  • 御膳料:お斎の代替を包む場合
    ※金額は地域慣習・寺院方針があるため、事前に率直に確認するのが最も確実です。表書きはそれぞれの名目で。

6-5. よくある質問(実務)

  • Q. 四十九日に間に合わない時は?
    A. 用意でき次第で問題ありません。白木位牌のまま法要を行い、後日本位牌に引き継ぎます。
  • Q. 夫婦位牌で片側は未刻字でも良い?
    A. 可能です。後刻を見越して文字サイズ・余白を設計しておくと統一感が保てます。
  • Q. 遠方で当日行けない/日程が合わない
    A. 開眼は法要に合わせてが基本。都合が合わない場合は寺院へ相談(寺院での読経→後日ご自宅で遷座、など柔軟に)。
  • Q. 浄土真宗の家だが位牌を作っても良い?
    A. 地域慣習で併用例もありますが、菩提寺の方針が最優先です。まずは確認を。

6-6. スケジュール例(四十九日基準)

  • 葬儀~初七日:白木位牌を安置
  • 葬儀後1~2週:本位牌の種類・サイズ決定、版下作成→校正
  • 葬儀後2~3週:刻字・仕上げ(納期1~2週間目安)
  • 四十九日当日開眼供養→本位牌へ切替、仏壇に安置
    (※地域で三十五日なら、上記を1~2週間前倒し)

6-7. 準備チェックリスト

  • 宗派・菩提寺の作法確認
  • 仏壇の実寸(高さ・幅・奥行)
  • 位牌の種類・サイズ(夫婦/繰出の有無)
  • 刻字情報(戒名/法名・没日・年齢・俗名・「位」の有無・和暦/西暦)
  • 版下校正(難字・旧字・配置)
  • 開眼日(四十九日等)・寺院への依頼内容
  • 供花・お供物・お布施まわりの準備

7. 安置場所と日々の供養作法:置き方・お供え・お手入れ

位牌は安全・清浄・礼節の3点を意識して安置します。毎日の所作は“無理なく続けられる形”でOKです。

7-1. 置き方の基本(安全+礼節)

  • 位置:仏壇のご本尊を妨げない場所。見台や小さな台で一段低く調整するのが上品。
  • 向き:仏壇の向きに合わせれば可。直射日光・結露・エアコン直風は避ける。
  • 高さ:扉の開閉に当たらない全高を確保。天井・棚板との余白は最低でも2~3cm。
  • 並べ方(複数基):向かって右が上座。古いご先祖から右→左へ。新仏は一時的に手前に出す運用も。
  • 夫婦位牌:先に亡くなられた方を向かって右に刻す運用が一般的。
  • 繰出(回出)位牌:札の順序を家内で統一し、台座の転倒対策を。
  • 耐震・防火耐震マット/ロウソクは不燃マット+不在時点灯NG。小さなお子様・ペット対策も忘れずに。

浄土真宗の場合:位牌ではなく過去帳・法名軸が中心。安置位置は菩提寺の指示に従う。

7-2. 日々の供養(基本セット)

  • 朝夕の合掌:姿勢を正し一礼→合掌→短い読経やお念仏・お題目→一礼。
  • 香(こう):線香1本で十分。煙少なめが良ければ微煙タイプや**塗香(ずこう)**も。
  • :生花が基本(棘や香りが強すぎるものは避け目)。造花も可だが清潔感重視。
  • :ロウソクは安全最優先。LED灯明でも気持ちは変わりません。
  • 水・供物:新しいお水を一杯。果物やお菓子は少量・清潔を保ち、傷む前に下げる。

“毎日フルセット”にこだわらず、無理なく続けられる所作を優先すると長続きします。

7-3. 週次・月次・年中行事の目安

  • 週1:仏具の乾拭き、花器・茶湯器の洗浄、香炉灰の攪拌(固まりほぐし)
  • 月初/命日:お花・お供物を新しく。命日は故人の好物を少量供えるのも一案。
  • 彼岸・お盆・年忌法要:掃除を丁寧に、位牌の位置・配列を見直し。法要時は新仏を手前に出す地域運用も。

7-4. お手入れ(材質別)

  • 塗位牌(漆・カシュー・ウレタン)乾拭きが基本。金箔・蒔絵はこすらず押さえる。クリーナー類はNG。
  • 唐木位牌(黒檀・紫檀 等):乾拭き+年に数回、柔らか布で艶出し。直射・過乾燥に注意。
  • ガラス・メタル:指紋はマイクロファイバーで。設置面の傷・滑り止め対策を。
  • 共通:ヤニ・煙の付着を防ぐため、線香は短時間微煙を選ぶと良い。

7-5. よくある実務の悩み

  • 置き場所が狭い札板型・薄型見台で高さを稼ぐ。花器はスリム型へ。
  • 既存位牌との調和書体・金色の色味を合わせる。サイズは既存より僅かに低めだと調和。
  • 煙・におい問題:微煙線香/電池灯明を活用。換気は点けてから少し置いて行う。
  • 地震・転倒:耐震マット+前縁からの後退(数cm)で落下リスク低減。
  • 掃除の頻度:**“触る場所だけ毎日、全体は週1”**が現実的で続きやすい。

7-6. 最低限のチェックリスト

  • 直射・エアコン直風を避けている
  • ご本尊を妨げない高さ/配置
  • 耐震マット・防火対策(不在時の点灯NG)
  • 花・水・供物の衛生が保たれている
  • 文字・蒔絵部分はこすらない
  • 並べ順(右上座→左下座)が統一されている

8. サイズ選びのコツ:仏壇とのバランス/寸法表記の見方

“失敗しない”サイズ選びは、**仏壇の実寸→必要な余白→位牌の寸法記号(寸)**の順で考えるとスムーズです。

8-1. まずは採寸(ここが一番大事)

  • 有効高さ:仏壇内の棚板から上部(欄間)まで。扉の開閉で当たらないかも確認。
  • 有効奥行き:背板から前縁の手前まで(扉の出っ張りがある場合はその分を差し引く)。
  • 有効幅:左右の柱/仏具との干渉を確認。花立・線香立の位置も合わせて測る。
  • 推奨余白:上30〜50mm、左右10〜20mm、前後15〜25mmを目安に“ゆとり”を確保。

8-2. 「寸」表記の意味——“札丈”と“全高”は別物

  • 多くの位牌は札丈(札板の高さ)を「〇寸」で表記します(1寸=約30.3mm)。
  • 実際に置いたときの高さは全高(台座・天冠を含む総高さ)。
  • 同じ4.5寸でも型や意匠で全高が2〜3cm変わることがあります。
    → 購入時は必ず「全高」の数値も確認してください。

札丈ミリ換算の早見(目安)

  • 3.5寸 ≒ 106mm(全高目安:16〜19cm
  • 4.0寸 ≒ 121mm18〜21cm
  • 4.5寸 ≒ 136mm20〜23cm
  • 5.0寸 ≒ 152mm22〜25cm
  • 5.5寸 ≒ 167mm24〜27cm
  • 6.0寸 ≒ 182mm26〜29cm
    ※全高は型で差が出ます(おおむね札丈×1.5〜1.9倍)。最終は個別スペックで要確認。

8-3. “仏壇×位牌”のバランス基準

  • 主役感:位牌の天冠がご本尊を越えない配置に。見台で微調整すると上品。
  • 視線のまとまり:線香立・花立より一段高く見えると堂々とします。
  • 既存との調和:複数基なら高さは僅かに段差をつけると整う(上座=向かって右がやや高め)。

8-4. 置き場所別の“だいたいの寸法感”

  • 上置き仏壇(省スペース)3.5〜4.5寸が収まりやすい。
  • 台付・地袋付の中型4.5〜5.5寸がバランス良。
  • 大型仏壇・本堂型5.0〜6.0寸で堂々と。
    ※花立や高杯の高さとの相対バランスも合わせてチェック。

8-5. 夫婦位牌・繰出位牌のサイズ選び

  • 夫婦位牌:文字量が増えるため、単品より0.5寸上げると可読性に余裕。
  • 繰出(回出)位牌:台座が大きめで奥行きを取りやすい幅・奥行きを先に確認。
  • 将来の追加刻字:文字サイズ・余白設計を事前に決めておくと統一感が保てます。

8-6. 奥行き・安定性の注意点

  • 前後の余白:前15〜25mmは“手前落ち”防止に有効。
  • 耐震:地震対策として耐震マットを台座下に。ガラス棚は特に推奨。
  • 重量バランス:背面にやや寄せ、前縁から数センチ後退させると安定。

8-7. “計算レシピ”——内寸から上限サイズを逆算

  1. 有効高さ(mm)から上余白30〜50mmを差し引く。
  2. その残りを1.6〜1.8(=全高/札丈のおおよそ)で割る → 許容札丈(mm)
  3. mmを30.3で割って**「寸」**に換算、最も近いサイズを選ぶ。
    :内寸330mm、上余白40mm → 残290mm ÷1.7 ≒ 170.6mm → **5.5寸(約166.7mm)**は入る/**6.0寸(約181.8mm)**は厳しい。

8-8. 迷ったときのチェックリスト

  • 「札丈」だけでなく全高の数値を確認した
  • 上下左右前後の余白を確保できる
  • 花立・線香立との高さ関係が整う
  • 扉の開閉で当たらない
  • 夫婦・繰出は幅/奥行きも確認済み
  • 既存位牌と書体・金色・高さの調和が取れる

9. 価格の目安と納期の考え方:本体・文字入れ・開眼の費用感

位牌費用は「本体価格刻字(文字入れ)+必要に応じて配送・設置、別枠で開眼供養のお布施」の合計で考えます。下は一般的な目安レンジです(地域・仕様・職人仕事で上下します)。

9-1. 本体価格の目安

  • 塗位牌(黒塗・漆系):量産品 1.5〜3万円/中級 3〜7万円/上位(本漆・蒔絵)7〜20万円超/名工品 30万円〜
  • 唐木位牌(黒檀・紫檀等):2〜6万円/中上位 6〜12万円/無垢上位 15万円〜
  • モダン位牌(ガラス・クリスタル・メタル・ウォールナット等):2〜8万円/上位 10〜20万円
  • 繰出(回出)位牌:3〜10万円/上位 10〜20万円(札枚数・意匠で増減)
  • 夫婦位牌(連名):単品より0.5寸上げるか、同寸で刻字を2名分。本体差額+刻字増が目安。

同じ「寸」でも型で全高が変わるため、見た目のボリュームも価格も上下します(第8章参照)。

9-2. 刻字(文字入れ)費用

  • 機械彫り(陰刻・金粉入れ):3,000〜10,000円/1基
  • 手彫り・手書き(金箔書き等):8,000〜20,000円/1基
  • 追加刻字(夫婦位牌の後刻・繰出札の追加):5,000〜15,000円/1名・1札
  • 版下作成・校正料:0〜3,000円程度(難字・旧字対応で加算あり)
  • 金色の種類本金粉指定は+3,000〜10,000円が目安(既存位牌と色味合わせ推奨)

9-3. 配送・設置まわり

  • 宅配:数百〜2,000円程度
  • 持参設置:3,000〜8,000円程度(地域・移動距離で増減)
  • 耐震マット等:数百〜1,000円台

9-4. 開眼(魂入れ)・法要での金封目安(地域差が大きい項目)

  • 御布施:1万〜3万円前後
  • 御車代(ご移動がある場合):3千〜1万円
  • 御膳料(お食事代替を包む場合):5千〜1万円
    ※寺院・地域の慣習差が大きいため、率直に確認するのが最も確実です。「お気持ちで」の場合は上記レンジを参考に。

9-5. 納期の目安(逆算の指針)

  • 通常仕上げ(機械彫り):5〜10営業日
  • 繁忙期(お盆・彼岸・年末):+3〜7日見込み
  • 本漆・蒔絵・手彫り:2〜4週間
  • モダン材(レーザー彫刻):3〜7日
  • 繰出札の追加:版下確定後3〜7日
    四十九日の2〜3週間前に版下確定が安全(第6章のスケジュール参照)。

9-6. 予算モデル(現実的な組み合わせ例)

  • A:初めての一基・シンプル重視
    唐木4.5寸+機械彫り+宅配 = 3.0〜4.8万円 前後
  • B:礼装感重視・しっかり仕立て
    漆塗5.0寸(中上位)+手書き金箔+持参設置 = 8〜15万円 前後
  • C:先祖をまとめる運用
    繰出位牌(札10枚想定)+機械彫り = 6〜12万円 前後
  • D:夫婦位牌(後刻前提)
    本体(単品同等〜やや上位)+刻字2名分+将来の後刻費用 (5千〜1.5万円) を別枠で確保

9-7. 見積りで“抜けがち”なチェックポイント

  • 見積りに本体/刻字/版下/配送・設置が分かれて記載されている
  • **追加刻字(後刻)**の単価も確認済み
  • 金色(本金粉/代用金)書体既存位牌との色合わせが明記
  • 誤字・旧字の無償修正条件(いつまで/どこまで)
  • 納期(校正→仕上げ)と、四十九日までの逆算が合っている

9-8. コストを抑えるコツ

  • 彫り仕上げ+代用金粉を選ぶ(見栄えと耐久のバランス良)
  • サイズは既存より0.5寸控えめにして価格とバランスを調整
  • 繰出位牌で集約し、将来の増設を抑える
  • 同時刻字割引の有無を確認(複数基まとめ作業)
  • 表は主文字中心・その他は裏面へ回し、版下をすっきりさせる

10. 買い替えや整理が必要なとき:連名・繰出位牌・まとめ方

「仏壇が手狭になった」「位牌が増えた」「破損や汚れが目立つ」——そんな時は連名位牌繰出(回出)位牌での“整理”が現実的です。宗派の作法と家内の合意を軸に、無理のない形へ整えましょう。

10-1. 見直しのきっかけ(よくあるケース)

  • 増えすぎた:祖父母・曾祖父母までで5基以上になり仏壇が窮屈。
  • サイズ不適合:仏壇を買い替えて高さ・奥行きが合わない
  • 破損・劣化:塗りの割れ・欠け、金箔の剥がれ、傾き。
  • 家族構成の変化:ご夫婦を1基にまとめたい、分家・本家の整理が必要。
  • 宗派・地域慣習:寺院の方針に合わせた表記・並べ方の統一が求められる。

10-2. 連名(夫婦)位牌へまとめる

対象:ご夫婦を1基に、または今後の後刻(追刻)を見込む場合。
手順

  1. 書式確認:菩提寺に「連名可/左右どちらを先/“位”の有無」など確認。
  2. サイズ選定:単品より0.5寸上げると文字レイアウトに余裕。
  3. 版下作成:先に亡くなられた方を向かって右(上座)に刻すのが一般的。将来の追刻スペースを設計。
  4. 開眼→安置:新位牌を開眼して安置。
  5. 旧位牌の扱い閉眼(魂抜き)→お焚き上げ/寺院預け/丁重保管のいずれか(10-5参照)。

ポイント:追刻時の書体・金色の色味合わせを事前指定。将来の追加費用と所要日数も確認。

10-3. 繰出(回出)位牌で集約する

対象:先祖代々が多く、省スペースで整えたいとき。
流れ

  1. 名簿づくり:戒名(法名)/俗名/没日/年齢を一覧表に。
  2. 配列ルール新→旧旧→新か、家内で統一(右上座の原則も確認)。
  3. 札枚数・予備:必要枚数+予備2〜3枚を確保。サイズは既存仏壇の奥行きと干渉チェック。
  4. 刻字仕様統一:和暦/西暦、享年/行年、金色の種類、書体を全札で共通化
  5. 開眼→安置:新しい繰出位牌に切替。旧位牌は10-5へ。

メリット:見た目が整い、**掃除・防災(耐震)**面でも有利。
注意:家系図と照合し、同名や没年の取り違いを避ける。

10-4. どちらでまとめる?簡易フローチャート

  • 対象がご夫婦中心/将来の追刻前提連名位牌
  • 多世代・多数のご先祖繰出位牌
  • 仏壇が小さい・棚上設置繰出 or 札板型
  • 宗派差が大きい(浄土真宗)過去帳・法名軸中心(位牌は併用可否を寺院確認)

10-5. 旧位牌の取り扱い(最重要)

  • 閉眼(魂抜き)供養必ず先に寺院で閉眼を行う(浄土真宗は表現が異なる:入仏・遷座等)。
  • その後の選択肢
    • お焚き上げ:寺院・専門所へ依頼。
    • 寺院預け・合祀堂納め:永代的にお任せしたい場合。
    • 保管:防湿・防虫の箱で丁重に(将来判断する場合)。
  • NG一般ゴミとして処分は不可。必ず閉眼→適切な方法で。

10-6. 修理か新調かの目安

  • 修理で対応可:塗りの小傷、金箔の剥離、角の欠け、傾き(台座調整)、札の再金入れ。
  • 新調が安心深い割れ・大きな欠損・反り、サイズ不適合、書式統一が崩れている場合。
  • 費用感:ちょっとした金箔直しは数千〜1万円台、本漆の本格修繕は数万円〜。修理期間中の仮安置も相談。

10-7. 情報整理の実務(そのまま使える手順)

  1. 宗派・寺院方針を確認(位・年齢表記・和暦/西暦)。
  2. 一覧表を作成:戒名/法名・俗名・没日・年齢・家系関係。
  3. 家内合意:並べ順・まとめ方(連名/繰出)・旧位牌の処置。
  4. サイズ設計:仏壇の内寸→必要余白→位牌寸法(第8章)。
  5. 版下校正:難字・旧字・金色・書体を最終確認。
  6. 開眼日程の調整:お布施・御車代の名目も準備(第6章・第9章)。
  7. 耐震・防火:安置後に耐震マット・ロウソク運用を再点検。

10-8. よくあるつまずき(回避策)

  • 閉眼を省略 → 必ず先に閉眼。
  • サイズ不足で追刻が窮屈 → 連名は0.5寸アップを基本。
  • 色味・書体がバラバラ既存に合わせる全体統一のどちらかに決める。
  • 繰出の札数が足りない予備札を最初から用意。
  • 和暦/西暦・享年/行年の混在家内ルールを先に決定し、一覧表に明記。
  • 納期遅延 → 四十九日から逆算(版下確定を2〜3週前)。

11. 位牌の処分・供養:閉眼供養(魂抜き)とお焚き上げの手順

位牌の整理・買い替え・まとめ直しの際は、必ず「閉眼供養(魂抜き)」を先に行います(※浄土真宗は表現が異なり「入仏・遷座」等)。閉眼後はお焚き上げ寺院預け丁重保管など、家の事情に合わせて選べます。

11-1. 流れの全体像(まずはこれでOK)

  1. 菩提寺へ相談(日程・表書き・供養方法を確認)
  2. 閉眼供養(読経にて礼拝対象としての役割をお返しする)
  3. その後の処置を選択
    • お焚き上げに出す
    • 寺院にお預け(合祀堂・位牌堂)
    • 丁重に保管(将来判断のため一時保管)

NG:閉眼をせずに一般ゴミへ出すこと。必ず寺院のご指示に従ってください。

11-2. 閉眼供養(魂抜き)の実務

  • 場所:ご自宅の仏壇前が一般的(寺院での読経→持参・預けも可)。
  • 準備物:位牌、仏具の清掃、供花・お線香・お供物、お布施(名目:御布施)
  • 服装:平服でOK(落ち着いた色)。
  • 表書き:御布施/御車代(出張時)/御膳料(お斎の代替時)。金額は事前に率直に相談を。
  • 複数基同時:まとめて閉眼可。一覧メモ(戒名・没日など)を用意すると読み上げがスムーズ。

11-3. お焚き上げの手順

  • 依頼先:菩提寺、または宗派問わず受け付ける寺社・供養専門所。
  • 受付方法:持参/宅配受付(専用箱や申込書がある場合も)。
  • 梱包の作法
    • 柔らかい布や紙でていねいに包む(新聞紙直巻きは避ける)
    • 外装に**「供養物在中」**と明記
    • 供養申込書・お礼の一筆を同封すると丁寧
  • 費用:お焚き上げ料(供養料)を同時に納める(方法は依頼先の案内に従う)。
  • 返却の有無:灰の返却は通常なし。記録証明(埋納・焼納報告)を出す先もあり。

材質注意:ガラス・金属など燃やせない素材の位牌は、閉眼後に寺院指示で分別・別途処理となる場合があります。必ず事前確認を。

11-4. 寺院預け・合祀堂へ納める

  • こんなときに:手元で安置できない/永代的に任せたい。
  • 手順:閉眼→位牌堂・合祀堂へ安置・納め。年会費/冥加金の有無・金額・期間を確認。
  • 記録:納入台帳や札の記載内容を確認し、家族で控えを共有。

11-5. 丁重保管(しばらく悩む・時期を待つ)

  • 条件:閉眼を終えていること。
  • 保管方法:防湿・防虫の箱に乾燥剤を入れ、直射日光・高温多湿を避ける
  • 目安:将来判断の期限(例:一周忌後・三回忌後など)を家内で決めて共有

11-6. 白木位牌(仮位牌)の扱い

  • 原則本位牌へ引き継ぎ後に閉眼→お焚き上げ。
  • 併存は最小限:白木と本位牌の長期併置は避ける。法要スケジュールに合わせて処置。

11-7. 現代位牌(モダン材)の特記事項

  • ガラス・クリスタル:閉眼後、寺院の方針に従い、お焚き上げ対象外なら埋納・専門廃棄を案内されることあり。
  • メタル:同上。可燃不可のため、閉眼後は分解・分別専門回収の指示に従う。
  • 名板(プレート):分離できる場合は名板側を供養対象とし、外枠は別処理…などケースごとに異なるため要確認。

11-8. よくある質問(Q&A)

  • Q. 菩提寺が遠方/檀家でない場合は?
    A. お近くの寺院でも相談可能。宗派不問で供養を受ける先や合同供養日を設ける先もあります。
  • Q. 閉眼せず処分してしまった…
    A. まず寺院へ相談し、お詫びとあわせて読経をお願いしましょう。可能なら残置物も合わせて供養を。
  • Q. 写真・過去帳なども一緒に?
    A. 供養対象に含められるもの不可のものがあります。写真は焼納可の先もありますが、ガラス額や金具は外すのが一般的。
  • Q. 神棚・神具が混在している
    A. 神道は**神職による清祓(おはらい)**が作法。位牌とは手順が異なるため、神社側に相談を。

11-9. 実務チェックリスト(そのまま使えます)

  • 菩提寺(依頼先)に日程・作法・費用を確認した
  • 閉眼供養を先に行う段取り
  • 梱包:布・奉書紙で包み「供養物在中」と明記
  • 申込書/一覧(戒名・没日)を同封
  • 金封の表書き(御布施/御車代/御膳料)を準備
  • ガラス・金属など素材別の扱いを事前確認
  • 納め先の受領・報告の方法を確認(証明の有無)
  • 家族で処置内容・時期を共有(記録を残す)

12. よくある質問(FAQ)

Q1. 白木位牌のままでも良いですか?
A. 葬儀〜忌明け(四十九日・地域により三十五日)までの仮位牌が白木です。以後は本位牌へ引き継ぐのが一般的です。間に合わない時は、用意でき次第でOK。

Q2. 宗派が分かりません。どう進めれば?
A. まずご家族に確認。分からない場合は寺院に相談し、刻字は後からでも調整可能なレイアウト(裏面に情報を回す等)で進めると安全です。

Q3. 菩提寺がありません(または遠方です)。
A. 近隣の寺院でも相談可。開眼供養のみお願いすることもできます。お布施名目(御布施/御車代など)と日程を事前に確認。

Q4. 浄土真宗ですが位牌を作っても良い?
A. 原則は過去帳・法名軸が中心。地域慣習で位牌を併用する例もあるため、寺院の方針を最優先してください。

Q5. 夫婦(連名)位牌は可能?左右はどうする?
A. 可能です。先に亡くなられた方を向かって右(上座)に刻す運用が一般的。将来の追刻スペース・書体と金色の統一を事前設計。

Q6. 刻字は戒名(法名)だけ?俗名も入れる?
A. 主文字は戒名(浄土真宗は法名)。俗名・没日・年齢は裏面に回すと上品で読みやすいです。

Q7. 享年と行年、どちらが正しい?
A. どちらも正しい表記です。寺院の方針に合わせ、家内で統一してください(混在は将来の混乱の元)。

Q8. 和暦と西暦、漢数字と算用数字は?
A. どちらでも可。これも統一が最重要です。

Q9. 四十九日に間に合いません。どうすれば?
A. 白木位牌のまま法要→後日、本位牌に引き継ぎで問題ありません。焦らず版下校正を確実に

Q10. 仏壇が小さい・置き場所が狭い場合は?
A. 札板型・薄型繰出位牌が有効。前後左右に余白を確保し、耐震マットを併用してください。

Q11. モダン位牌(ガラス・クリスタル・金属)は大丈夫?
A. 可能です。指紋・反射・重量・設置面の傷に配慮。レーザー彫刻の可読性は置き場所の光量で変わるため事前確認を。

Q12. 価格の目安は?
A. 本体+刻字で3〜5万円台から。塗り上位や手書き金箔、蒔絵は**8万円〜**も。詳細は第9章のレンジを参照。

Q13. 旧位牌はどう処分する?
A. **閉眼供養(魂抜き)**を先に行い、お焚き上げ寺院預け丁重保管から選択(第11章)。

Q14. 開眼供養の服装・持ち物は?
A. 平服で可(落ち着いた色)。位牌・供花・線香・お供物・お布施を用意。御車代・御膳料が必要な場合は別包。

Q15. 追加刻字(夫婦位牌の後刻)はどれくらいでできる?
A. 目安3〜7日。繁忙期や手書きは**+数日**。書体・金色合わせを必ず指定。

Q16. 掃除のコツは?
A. 乾拭きが基本。金箔・蒔絵はこすらず押さえる。ガラス・金属はマイクロファイバーで。直射日光・エアコン直風はNG。

Q17. 破損・汚れが気になる。修理と新調の判断は?
A. 軽微な剥離や小傷は部分修理で可。深い割れ・反り・サイズ不適合新調が安心(第10章の基準参照)。

Q18. 仏壇がまだ無い・今後買う予定です。サイズは?
A. 先に予定場所の採寸→仮の棚で高さを想定。位牌は4.0〜4.5寸から検討し、仏壇購入時に微調整すると失敗が少ないです。

13. まとめ(失敗しない選び方/相談先の案内)

要点一気読み

  • 位牌は故人の“依り代”。葬儀後は白木 → 本位牌へ切替。
  • 宗派の作法が最優先(浄土真宗は過去帳・法名軸が中心)。
  • 形は塗位牌/唐木位牌/繰出(回出)/夫婦位牌/モダンから、仏壇と生活空間に合うものを。
  • サイズは札丈だけでなく全高を確認。仏壇内寸に上下左右前後の余白を残す。
  • 刻字は主文字=戒名(法名)、その他は裏面に回すと上品。享年・行年/和暦・西暦は統一
  • 納期は版下確定→刻字→仕上げで1~2週間が目安(繁忙期は+α)。四十九日から逆算
  • 安置はご本尊を妨げない位置耐震・防火をセットで。
  • 整理は連名位牌繰出位牌で。旧位牌は閉眼→お焚き上げなど丁重に。

初めての最短手順(7ステップ)

  1. 宗派・寺院の方針確認(位の有無・年齢表記・和暦/西暦)。
  2. 仏壇の採寸(高さ・幅・奥行+必要余白)。
  3. 種類とサイズを決定(塗 or 唐木/単品・夫婦・繰出)。
  4. 刻字情報を整理(戒名/法名・没日・年齢・俗名)。
  5. 版下作成→校正(難字・旧字・配置・金色)。
  6. 刻字・仕上げ→納品検品(全高・色味・書体の一致)。
  7. 開眼供養→安置(お布施名目、供花・線香等の準備)。

費用と納期の目安

  • 本体+刻字:3~5万円台から(上位仕様は8万円~も)。
  • 納期:通常5~10営業日、手書きや本漆は2~4週間
  • 開眼のお布施は地域差大。事前確認が最も確実

最後のチェック

  • 宗派ルール・家内の統一が決まった
  • 全高・余白・耐震が確保できる
  • 和暦/西暦・享年/行年を統一した
  • 版下を家族で最終校正した
  • 四十九日から逆算したスケジュールが組めている